寒冷地リゾートマンションの長期修繕計画見直し
数年後に大規模修繕工事の実施時期を控えるマンションで、修繕積立金の収支を確認し、計画の可能性を高めるため、長期修繕計画の見直しを実施しました。対象は寒冷地のリゾートマンションであり、一般的な分譲マンションに比べて設備構成・維持管理条件が複雑となるため、工事項目・修繕時期・費用の再整理が必要となる案件でした。
| 物件名称 | NVマンション |
|---|---|
| 所在地 | 群馬県(草津エリア) |
| 構造・規模 | 鉄骨鉄筋コンクリート造/地上12階建/284戸 |
| 業務名 | 長期修繕計画見直し業務 |
[ 課題解決例 ]
課題感
1.寒冷地条件およびリゾート特有の使用環境を踏まえた、計画(修繕時期・更新範囲)の再整理
2.温泉関連設備を含む特殊設備の計画反映
3.給排水管の状態確認と、直近工事への反映可否の判断
4.30年収支の検証と、資金不足に対する対策提示
解決施策
実施方針・進め方
1.設備・仕様の前提整理:温泉関連設備を含む設備群を整理し、更新周期・更新範囲等の計画前提を設定しました。
2.大規模修繕工事の精査:過去の資料(竣工図書・修繕履歴等)を基に、次回工事における設計内容(施工範囲・設計仕様等)を精査しました。
3.給排水設備の状態把握:内視鏡調査を実施し、更新要否の判断材料を取得しました。
4.30年計画の再構築:調査結果を反映し、今後30年の収支計画を試算しました。
5.積立改定案の提示:合意形成を踏まえ、改定案を複数提示しました。
6.立地条件への配慮:草津エリアの立地特性を踏まえ、工事費前提に運搬費・仮設等の間接費を織り込む整理を実施し、推定工事費の前提条件を整備しました。
調査・検証内容
1. 給排水設備 内視鏡調査
・調査対象:給排水設備
・目的:腐食・閉塞・付着・劣化等の状態把握を行い、更新要否の判断材料とする
2. 内視鏡調査の主な所見
・共用給水系:劣化が著しい為、優先度が高い
・住戸内給水系:直ちに重大不具合が顕在化している状況ではないものの、耐用年数を踏まえ計画的検討が必要
・排水系:枝管は相対的に健全である一方、竪管等は再度詳細調査を計画化する方向で整理
計画見直し結果
見直しの結果、当該マンションでは2029年の大規模修繕工事以降に資金不足が生じる可能性が高いと予測されました。
本来は、2033年の排水管更新までを目標として、修繕積立金を改定することが望ましいものの、当該期間内での不足解消を前提とした改定は、値上げ幅が大きくなり、合意形成が困難となる可能性があるため、推定修繕工事費の累計を目標とし、負担平準化を目的とした均等積立方式を採用しました。
なお、改定案Aでは、30年収支の成立性を優先し、資金不足リスクの低減を図る位置づけとしています
修繕積立金の改定案(2案)
1.改定案A(基本案):推定される更新項目を織り込み、30年収支の成立性を重視した改定案
2.改定案B(玄関扉・サッシ更新を除外):玄関扉・サッシ更新は実施有無の検討余地がある項目として切り分け、短中期の負担増を抑制した改定案
※いずれも、推定修繕工事費の累計を指標とし、均等積立方式により負担平準化を図る構成としました。
改定案B(玄関扉・サッシ更新除外)の根拠
改定案Bでは、玄関扉およびサッシ更新について、物件特性・使用実態を踏まえ実施有無の検討余地がある項目として整理し、計画上はいったん対象外としました。
・玄関扉:内部廊下(内廊下)に面しており、外気・雨掛かり等の影響を受けにくいことから、一般に劣化進行が緩やかとなる傾向があるため。
・サッシ:リゾートマンションとしての利用形態上、通年居住を前提としない住戸が多く、費用対効果が相対的に低い可能性があるため。
なお、当該項目は恒久的に除外する趣旨ではなく、劣化状況・居住実態・要求性能(結露対策等)を踏まえ、必要性が確認された段階で計画へ再反映する方針としました。
資金不足時の対応方針
計画上、資金不足が生じる時期においては、一時金徴収の回避として、金融機関や公的融資を含む資金調達手段を検討することがあります。
融資等を適切に活用することで、工事実施時点での一時的負担を抑え、結果として区分所有者の負担軽減につながる可能性があります。
成果
・寒冷地・リゾート特有条件と温泉関連設備を含む設備特性を反映し、更新周期・更新優先度を再定義した上で、実態に即した長期修繕計画(30年)を再構築
・内視鏡調査により劣化状況を把握し、共用給水系(2年以内の実施)を優先対応として整理
・2029年以降の資金不足を可視化し、改定案2案を提示して合意形成の選択肢を確保
・草津エリアの立地特性を踏まえ、運搬費等の間接費を工事費へ織り込む整理を実施
・サッシ・玄関扉の更新を検討項目として切り分け、合意形成の論点整理を実施
・管理組合として、これまで不明瞭であった今後30年間の資金計画が概ね可視化され、意思決定の前提条件が整備された
