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長期修繕計画に物価上昇をどう反映する?古い工事費を使い続けるリスク
こんにちは。MRCの平松です。
長期修繕計画を確認したとき、工事費が現在の相場より低く見えることがあります。
計画を作成してから年数がたっている。
前回の見直し後に、資材費や人件費が上がっている。
実際に施工会社から見積もりを取ったら、計画額を大きく上回った。
このような場合、問題になるのは大規模修繕工事の予算だけではありません。
長期修繕計画に記載された工事費が低いままだと、修繕積立金の将来収支も、実際より良く見えてしまいます。
先に結論をお伝えすると、物価上昇への対応は、計画全体へ一律の率を掛けるだけでは不十分です。
工事項目ごとの単価、数量、修繕時期、諸経費などを現在の状況に合わせて確認し、その結果を収支計画へ反映する必要があります。
今回は、長期修繕計画に物価上昇や工事費高騰をどう反映するのか、管理組合が確認したいポイントを解説します。
古い工事費のままだと何が起きる?
長期修繕計画の工事費が低く設定されたままでも、表の上では収支が成立しているように見えることがあります。
しかし、実際に工事を検討すると、次のような問題が出てきます。
- 施工会社の見積額が計画額を上回る
- 修繕積立金の不足が直前に分かる
- 工事範囲を削減する必要が出る
- 修繕積立金の急な増額が必要になる
- 一時金や借入れを検討することになる
- 実施すべき工事を先送りする
特に注意したいのは、計画上の残高が多く見えている場合です。
実際には資金が足りないのに、古い工事費を使っているため、余裕があるように見えている可能性があります。
物価上昇は一律に反映できる?
「物価が上がっているなら、すべての工事費を10%上げればよいのではないか」
このように考えることがあります。
簡易的な確認として、全体へ一定率を掛ける方法はあります。
ただし、本格的な長期修繕計画の見直しでは、それだけでは十分ではありません。
工事費の変動は、すべての項目で同じではないからです。
| 工事項目 | 工事費に影響する主な要素 |
|---|---|
| 外壁補修 | 労務費、補修数量、仕上げ材 |
| 防水工事 | 防水材料、撤去範囲、施工方法 |
| シーリング工事 | 材料費、施工数量、作業条件 |
| 仮設工事 | 足場面積、運搬費、安全対策 |
| 給排水設備 | 配管材料、機器価格、施工方法 |
| エレベーター | メーカー見積、部品供給、改修範囲 |
| 機械式駐車場 | メーカー費用、更新方式、撤去の有無 |
材料費の影響が大きい工事もあれば、人件費や作業条件の影響が大きい工事もあります。
そのため、一律の物価上昇率だけでなく、工事項目ごとに現在の単価を確認する方が、実際の工事費に近づきます。
まず工事費の基準時点を確認する
理事会が最初に確認したいのは、長期修繕計画に使われている工事費が、いつの時点のものかです。
計画書の作成日が新しくても、使用している単価が古い場合があります。
確認したい項目は次のとおりです。
- 長期修繕計画の作成年月
- 前回見直した年月
- 工事単価の基準時点
- 単価の根拠
- 前回大規模修繕の実績額
- 消費税の扱い
- 諸経費の計上方法
「最近作った計画だから大丈夫」と判断するのではなく、どの時点の価格を使っているかまで確認します。
工事単価だけでなく数量も確認する
工事費は、基本的に単価と数量の組み合わせで算出します。
工事費 = 数量 × 単価
そのため、単価だけを現在の価格へ更新しても、数量が実際の建物と合っていなければ、計画額は適切になりません。
たとえば、外壁面積やシーリングの延長、屋上防水の面積、共用廊下の床面積などです。
新築時の図面数量をそのまま使っている場合や、概算数量で作成されている場合は、実際の施工範囲と差が出ることがあります。
工事費を見直すときは、次の順番で確認します。
数量が建物と合っているか
↓
工事仕様が適切か
↓
現在の単価を反映する
↓
諸経費と消費税を加える
↓
収支計画を再計算する
単価だけを上げるのではなく、算出の前提全体を確認することが必要です。
過去の工事実績は参考になる
直近で大規模修繕や設備工事を行っている場合は、その実績額が重要な参考になります。
実際に支払った工事費には、建物の規模、形状、施工条件などが反映されています。
ただし、前回工事の総額をそのまま次回へ入れるだけでは十分ではありません。
前回と次回では、次の条件が変わる可能性があります。
- 工事範囲
- 補修数量
- 使用材料
- 仮設方法
- 施工時期
- 設備の更新範囲
- 法令や安全対策
- 諸経費
過去の実績を基準にしながら、次回工事で変わる部分を整理します。
物価上昇率は何%に設定すればよい?
将来の物価上昇率について、一律に「何%が正しい」と決めることはできません。
長期修繕計画は30年、40年先まで扱うことがありますが、その期間の資材価格や人件費を正確に予測することは困難です。
そのため、将来の数字を細かく予測することよりも、次の二つが重要です。
現在の工事費に近い単価で計画を作ること
一定期間ごとに工事費を更新すること
必要に応じて、管理組合の検討用に複数の収支案を作る方法もあります。
| 収支案 | 内容 |
| 基本案 | 現在の工事単価を基準にする |
| 上昇想定案 | 将来の工事費上昇を一定範囲で見込む |
| 高騰時案 | 工事費が大きく上昇した場合の不足額を確認する |
複数案を比較すると、工事費が上昇した場合に、いつ資金不足が発生するかを確認しやすくなります。
ただし、上昇率の設定だけを細かくするのではなく、定期的に実際の価格へ更新することが前提です。
物価上昇を反映したら積立金も確認する
工事費を現在の水準へ更新すると、将来の支出額が増えることがあります。
その場合は、修繕積立金の収支もあわせて確認します。
見るべきなのは、計画期間の最後に残高があるかだけではありません。
- 途中で残高がマイナスにならないか
- 大規模修繕直後に残高が少なくなりすぎないか
- 設備更新が重なる時期に資金があるか
- 借入れや一時金を前提としていないか
- 将来の増額幅が現実的か
工事費を更新した結果、積立金の見直しが必要になる場合があります。
そのときは、いきなり結論を出すのではなく、工事時期、工事範囲、積立方法を含めて複数案を比較します。
工事を先送りすれば解決するとは限らない
工事費が上がったときに、修繕時期を後ろへずらして収支を合わせる計画もあります。
ただし、資金が足りないことだけを理由に工事周期を延ばすのは適切ではありません。
修繕時期は、建物や設備の状態、使用材料、前回工事の内容などを踏まえて判断します。
劣化が進んでいる工事を先送りすると、補修範囲が広がり、結果として工事費が増えることもあります。
工事周期を延ばす場合は、調査や点検によって、延長できる根拠を確認する必要があります。
どのタイミングで見直す?
長期修繕計画は、一般的に5年程度ごとの見直しが一つの目安です。
ただし、次のような場合は、5年を待たずに工事費を確認することがあります。
- 大規模修繕工事の検討を始める
- 施工会社の見積額が計画額を大きく上回った
- 資材費や人件費が大きく変動した
- 設備更新の見積もりを取得した
- 修繕積立金の増額を検討する
- 前回工事後に計画を更新していない
特に、大規模修繕の直前に初めて見直すと、資金不足への対応期間が短くなります。
工事予定の数年前から確認しておく方が、管理組合として選択肢を持ちやすくなります。
管理組合が確認したいチェックポイント
古い長期修繕計画を確認するときは、次の項目を見てください。
| 確認項目 | チェックする内容 |
| 作成時期 | 前回見直しから何年たっているか |
| 単価基準 | いつの工事価格を使用しているか |
| 数量 | 建物の実際の数量と合っているか |
| 工事実績 | 前回工事の金額が反映されているか |
| 設備更新 | メーカー見積などが反映されているか |
| 諸経費 | 仮設費や現場管理費などが含まれているか |
| 消費税 | 現在の条件で計算されているか |
| 収支 | 工事費更新後も資金不足がないか |
この中で複数の項目が確認できない場合は、長期修繕計画の見直しを検討する時期と考えられます。
MRCでは実際の施工相場を計画に反映する
MRCでは、長期修繕計画を作成・見直しする際、単純な標準単価だけでなく、実際の大規模修繕工事や設備工事の施工相場を確認しながら工事費を算出します。
また、過去の工事履歴や建物の仕様を確認し、工事項目、数量、修繕周期、工事費を整理します。
長期修繕計画は、将来の工事費を完全に予測するものではありません。
だからこそ、現時点でできるだけ実態に近い計画を作り、その後も定期的に更新することが必要です。
よくある質問(Q&A)
長期修繕計画の物価上昇率は何%にすればよいですか?
すべてのマンションや工事項目に共通する一律の上昇率はありません。まず現在の施工相場へ更新し、必要に応じて複数の上昇想定で収支を確認します。
古い工事費でも、積立金が足りていれば問題ありませんか?
古い工事費を使った収支計画では、実際より支出が少なく表示されている可能性があります。現在の単価に更新したうえで、改めて積立金の見通しを確認する必要があります。
すべての工事費を一律に上げてもよいですか?
概算確認としては利用できますが、本格的な見直しでは、工事項目ごとの単価、数量、仕様、諸経費を確認する方が適切です。
大規模修繕の直前に見直せば十分ですか?
直前に資金不足が分かると、積立金の調整や合意形成に使える期間が短くなります。工事予定の数年前から確認する方が対応しやすくなります。
将来の工事費を正確に予測できますか?
正確な予測は困難です。現在の施工相場に基づいて計画を作成し、一定期間ごとに実績や価格変動を反映することが現実的です。
まとめ
長期修繕計画に物価上昇を反映するときは、計画全体へ一律の率を掛けるだけでは十分ではありません。
工事項目ごとの単価、数量、工事仕様、諸経費、消費税などを確認し、現在の施工相場に近い工事費へ更新する必要があります。
古い工事費を使い続けると、修繕積立金の収支が実際より良く見え、大規模修繕の直前になって資金不足が判明する可能性があります。
現在の価格に更新する。
収支を再計算する。
必要に応じて複数案を比較する。
その後も定期的に見直す。
この流れを続けることで、長期修繕計画を実際の管理組合運営に使える資料として維持できます。
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