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理事が替わるたびに修繕の話が戻るのはなぜ?管理組合で起こりやすいこと
こんにちは。MRCの平松です。
管理組合の方と話していると、大規模修繕や長期修繕計画の話そのものより、もっと手前のところで困っている場面があります。
それが、理事が替わるたびに、修繕の話が少し振り出しに戻ってしまうことです。
たとえば、
「前の理事会ではかなり整理していたはずなのに、また同じ説明から始まっている」
「資料はあるのに、新しい理事には流れが伝わりにくい」
「誰かが替わると、どこまで話が進んでいたのか見えなくなる」
「結局、毎回また前提確認に時間がかかる」
こうした状況です。
これは、特定の理事が悪いとか、引き継ぎが雑だとか、そういう単純な話ではないと思っています。
マンション管理では理事交代があるのが自然ですし、仕事をしながら役員を担っている方も多いので、引き継ぎに限界があるのも当然です。
それでも修繕の話が戻ってしまうのは、工事や計画の情報が、次の理事会が使いやすい形では残っていないことが多いからです。
今回は、理事が替わるたびに修繕の話が戻りやすいのはなぜか、そのとき理事会で何が起きているのかを整理してみたいと思います。
前の理事会で分かっていたことが、次の理事会では前提ではなくなる
理事会の中では、会議を重ねるうちに少しずつ共通認識ができていきます。
この外壁の劣化は前回からの続きだとか、
この設備はそろそろ更新時期に近いとか、
この金額は前回の見積比較から見ても大きく外れていないとか、
そういうことが少しずつ共有されていきます。
ただ、その共通認識は、理事が替わると一度切れます。
前の理事会では当たり前に分かっていたことでも、新しい理事から見ると、そもそも前提がありません。
その状態で同じ資料を見ても、見えている景色がかなり違います。
つまり、理事交代で起こるのは「知識が足りない」というより、積み上がっていた前提が消えることなのだと思います。
資料は残っていても、流れまでは残りにくい
引き継ぎの話になると、よく
「資料はちゃんと渡している」
という声が出ます。
もちろん、それはとても大事です。
長期修繕計画、工事報告書、見積比較表、写真、理事会資料。こうしたものが残っていること自体は大切です。
ただ、実際に新しい理事が困りやすいのは、資料の有無よりも、その資料がどういう流れの中にあるのか分からないことです。
たとえば、
なぜこの会社が候補だったのか。
なぜこの工事項目を残したのか。
なぜこの設備更新は今回は見送ったのか。
前回の理事会では何が一番の論点だったのか。
こうしたことは、紙の資料だけでは伝わりにくいです。
資料があることと、流れが分かることは別です。
ここがつながっていないと、新しい理事会はどうしても「まず全体像を読み解くところ」から始めることになります。
修繕の話は、単体では理解しにくい
大規模修繕や長期修繕計画の話は、一つの資料だけ見ても理解しにくいことがあります。
今の工事項目を考えるには、前回工事の履歴も見たい。
積立金の見通しを考えるには、今後の設備更新も見たい。
住民説明を考えるには、過去にどう説明してきたかも知りたい。
つまり、修繕の話はもともと、いくつかの情報がつながっていないと判断しにくいものです。
そこに理事交代が入ると、その“つながり”を知っている人が減ります。
そうなると、新しい理事会では一つひとつ確認し直さないと話を進めにくくなります。
これが、理事が替わるたびに少し話が戻る理由の一つです。
説明する人だけが分かっている状態になりやすい
理事交代がある管理組合で起きやすいのが、修繕の話をよく分かっている人が一部に偏ることです。
たとえば、前の理事長だけが詳しい。
修繕委員の一人だけが経緯を把握している。
管理会社の担当者だけが前回の流れを知っている。
そういう状態です。
その状態でも一応は話は進みます。
ただ、その人が変わったり、会議にいなかったりすると、一気に前提共有が難しくなります。
新しい理事からすると、誰かの説明を聞けば分かるけれど、自分で資料を見てたどれる感じがしません。
すると、会議のたびに説明役が必要になります。
これはかなり負担が大きいですし、理事会全体としても疲れやすくなります。
前回どこまでやったかが分からないと、今の話もしにくい
修繕の話では、前回工事とのつながりがかなり大事です。
外壁は前回どこまで補修したのか。
防水は更新だったのか、それとも延命的な対応だったのか。
給排水管は一部改修だったのか。
見送った工事項目は何だったのか。
このあたりが見えていると、今の工事の必要性も考えやすいです。
でも理事交代のあと、そこが見えなくなると、今の話も少し曖昧になります。
今回の工事項目が増えているのか、前回の続きなのか、今の劣化が想定どおりなのか、そのあたりがつかみにくくなるからです。
その結果、理事会の中で
「前回どうでしたっけ」
が増えやすくなります。
この確認自体は必要です。
ただ、毎回そこから始まると、どうしても前へ進むスピードは落ちます。
新しい理事ほど、間違えたくない気持ちが強い
途中から理事になった方は、前の経緯を十分に知らない分、判断を慎重にしようとします。
これはとても自然なことです。
工事の規模も金額も大きいですし、住民説明にもつながります。
分からないことが多い中で、早く決めてしまうのはむしろ不安です。
そのため、新しい理事が増えた理事会では、
もう少し確認したい。
前回資料も見直したい。
比較の前提を整理したい。
という流れになりやすいです。
それは悪いことではありません。
ただ、そうした慎重さが重なると、前の理事会ではかなり進んでいた話でも、一度立ち止まって整理し直す必要が出てきます。
理事交代で話が戻るのは、引き継ぎ不足だけではなく、新しい理事が責任を持って理解しようとするからでもあるのだと思います。
住民説明の準備も一度後退しやすい
前の理事会では、住民説明を見据えて整理していたことも、新しい理事会ではそこまでまだ意識が向かないことがあります。
たとえば、
どの写真を使うと伝わりやすいか。
前回との違いをどう説明するか。
お金の話をどの順番で出すか。
どこまでを決定事項として話すか。
こうしたことは、理事会の中で少しずつ言葉にしていく必要があります。
でも理事交代があると、まずは内部で理解をそろえることが優先されます。
そのため、住民説明に向けた整理は一後退しやすいです。
結果として、住民説明の準備もまた少し手前からやり直す感じが出てきます。
議事録だけでは追いにくい
理事交代のあとの引き継ぎで、議事録はもちろん大切です。
ただ、議事録だけで修繕の流れを追うのは、かなり大変です。
会議で出た発言は残っていても、
今回の論点は何だったのか。
何が整理済みで、何が保留なのか。
次回どこを見る予定だったのか。
そうしたことが、あとから読む人にはつかみにくいことがあります。
しかも修繕の話は一回で終わりません。
何度かの会議にまたがって進むので、議事録だけを順番に追っても、全体像が見えにくくなります。
そのため、理事交代のあとに必要なのは、議事録の束だけではなく、今の状況を短く整理した見取り図のようなものなのだと思います。
人が替わっても続く仕組みがないと、毎回似た苦労が出る
ここまでの話をまとめると、理事交代で修繕の話が戻りやすいのは、人が替わることそのものより、人が替わっても流れが残る仕組みが弱いことが大きいです。
たまたま詳しい理事がいる年は回る。
でも、その人が替わるとまた大変になる。
これでは、毎回似た苦労が出てきます。
理事会に必要なのは、誰か一人が覚えていることではなく、次の理事会も同じ前提で入りやすい状態です。
たとえば、
修繕履歴がすぐ見える。
長期修繕計画とつながっている。
前回の論点が短く整理されている。
住民説明で使った資料も追える。
こうした状態があると、人が替わっても話が切れにくくなります。
引き継ぎは“資料を渡すこと”より“見えること”が大きい
引き継ぎというと、つい資料をまとめて渡すことを想像します。
もちろん、それも必要です。
でも、修繕の話では、それだけでは足りないことが多いです。
資料が多いほど、新しい理事には少し重たく感じられることもあります。
それより大切なのは、
今どこまで話が進んでいるのか。
前回の理事会は何を重視していたのか。
次にどこを見ればよいのか。
そこが見えることです。
人が替わっても前に進みやすい理事会は、資料が多い理事会というより、流れが見える理事会なのだと思います。
よくある質問(Q&A)
理事が替わるたびに修繕の話が戻るのは仕方ないことですか?
ある程度は自然なことです。
ただ、修繕履歴や検討経過が見える形で整理されていると、戻り幅はかなり小さくなります。
議事録が残っていれば十分ではないのですか?
議事録は大切ですが、それだけだと全体の流れをつかみにくいことがあります。
何が論点で、今どこまで進んでいるのかが短く整理されている方が使いやすいです。
引き継ぎで一番大事なのは何ですか?
資料の量より、次の理事会が状況をすぐつかめることです。
前回工事、今の計画、今後の論点がつながって見えると、かなり進めやすくなります。
まとめ
理事が替わるたびに修繕の話が戻りやすいのは、誰かが悪いからではありません。
前の理事会で共有されていた前提や流れが、そのまま次の理事会には渡りにくいからです。
資料は残っていても、意味やつながりまでは伝わりにくい。
そのため、新しい理事会ではまた確認から始まりやすくなります。
修繕の話は、一つの資料だけで決まるものではありません。
履歴、計画、費用、住民説明がつながっているからこそ、人が替わっても流れが見えることがかなり大きくなります。
理事交代があっても前に進みやすい管理組合は、特別な理事がいるというより、次の人が入りやすい形で情報が整理されているのだと思います。
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建物を3Dモデリングし、一級建築士事務所が長期修繕計画を策定した上で、維持管理を伴走する仕組みですので、お悩みの管理組合様はぜひご検討ください。
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