こんにちは、MRCの平松です。
管理組合様で大規模修繕工事を計画した際に、【工事監理業務】だけを頼もうとしたら断られた経験はありませんか?
そんな経験がある方は、本記事を見ていただければ参考になると思います。
この記事は以下のような方におすすめ。
そもそも工事監理って何?って方もおられると思いますが、建築士法では【その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること(建築士法第2条第7項)】とされており、建築士の独占業務です。
大規模修繕工事においては、設計図書と照合するだけではなく、幅広いスキルが求められます。
大規模修繕工事の工事監理
工事監理の重要性
工事監理の考え方
大規模修繕工事を発注する場合、管理組合のパートナーとして、分譲マンション大規模修繕工事の精通した専門家を活用することが一般的です。
大規模修繕工事の関する発注方式としては大きく2つに分類されますが、それぞれの概要は次の通りです。
- 設計監理方式
設計監理方式は、工事を行う施工会社とは別に第三者機関である設計事務所などを選定し、一級建築士などの専門家に調査診断や改修設計などの大規模修繕工事の計画策定や、工事着工後の工事監理業務を委託する方式です。
当社などの設計コンサルタントを導入する場合は、設計監理方式となり、完全な第三者として設計や工事中のチェックを行います。
基本的に設計事務所に「工事監理」を委託する場合は、設計監理方式となります。
- 責任施工方式
責任施工方式は、工事を行う施工会社が調査や改修設計、工事までを一括して発注する方式です。
責任施工方式であっても社内に一級建築士などの専門家がいるため、現場サイドとは別に社内検査が行われることが一般的です。
管理会社が大規模修繕工事を実施する場合は、社内に専門家がいたとしても「責任施工方式」に該当すると考えるべきです。
工事監理はどんなことを行うの?
大規模修繕工事の工事監理は、新築の工事監理と異なり、着工前の工事説明会サポートを含めた幅広い対応が必要となります。
大きい項目は次の通りです。詳しくは当社【工事監理業務】をご参照ください。
- 着工前準備
- 工事請負契約書の内容確認
- 工事説明会開催補助
- 施工計画書の確認
- 工事監理計画書の提出
- 工事監理
- 各種検査
- 二者(施工会社・設計事務所)定例会議(1回/週)
- 三者(管理組合・施工会社・設計事務所)定例会議(1回/月)
マンション大規模修繕工事で、工事監理者が現場に常駐することはあまりありません。ポイントを押さえていれば週に2回程度で十分確認が出来ます。
- 竣工・引き渡し
引き渡し時は施工会社より竣工図書が提出されます。竣工図書は次回の大規模修繕工事時のための重要な書類であるため、指導、確認を行います。
- アフター対応
工事が終わって、すべて完了ではありません。各工法別の保証期間が定められるため、点検時期に応じて立ち合いなどを行います。
工事監理導入の効果
一つの会社にすべてを任せる「責任施工方式」と比較して、「設計監理方式」を導入して、工事監理を行った場合は多くのメリットがあります。
想定できるメリットは次の通りです。
- 品質を確保できる
第三者である専門家がチェックを行うため、手抜き工事や悪い仕上がりについて厳格に是正指示がされます。
施工会社が単独で工事を行う場合と比較すると高品質な工事ができます。
- 金銭面で不利な要求を防止できる
大規模修繕工事では、工事着工後に工事金額が変動する「実数清算工事項目」や「追加工事」の提案がされます。
管理組合様の中に専門家がいない場合は、この金額を割り増して請求されたり、不要な工事を勧められたりする可能性があります。
これらは工事監理者を配置することで防止することができます。
- 居住者への説明ができる
大規模修繕工事が着工する前の工事説明会でよくある質問に「管理組合側で誰がチェックを行うのか?」があります。
実際に管理組合様でチェックを行うにしても、時間や専門知識の観点から難しく、工事監理者を配置することでそれらの負担が減ります。
また工事期間中のクレームについても、施工会社と連携して対応するため、管理組合様は安心して任せることができます。
工事監理のみで受託する会社が少ない理由
技術者が不足している
大規模修繕工事に関わる管理会社・設計事務所・施工会社は、どの会社も慢性的な技術者不足に陥っています。
工事監理業務は大規模修繕工事コンサルティングと呼ばれる【調査業務・設計業務・施工会社選定補助業務・工事監理業務】の中で最も一級建築士など専門技術者の人手を必要とします。
そのため、問い合わせをしても断ることが多くあります。
儲からない
工事監理業務は大規模修繕工事コンサルティング業務の中で、最も儲かりません。
理由は前述した技術者が不足していることに加え、一回いくらの様な委託契約になる為、調査や設計業務の様に利益が出づらい業務になります。
その上、工事中のトラブルや様々な対応が必要になるため、受託した場合のリスクが大きいのです。
状況の把握が難しい
基本的に設計事務所は、自社が設計した設計図書の内容に沿って、工事監理を行うことを望みます。
調査や設計を行っていない建築物に対して、工事監理のみ実施することは経験の少ない技術者では状況把握が非常に困難であり、敬遠される要因となっています。
工事監理者を配置せず、失敗する例
低品質な工事
工事監理者を配置した場合は、第三者の一級建築士などの専門家が施工会社の施工途中や仕上がり、居住者目線での指摘など様々なチェックを実施します。
管理会社や施工会社で自社に設計監理部門があり、完全に独立した部門としてチェックするとしても自社で工事監理を行っていては指摘は甘くなり、低品質な工事が行われる可能性があります。
実数精算工事や追加工事が多くなる
大規模修繕工事では実数精算工事項目や追加工事が多く発生します。各項目の説明は次の通りです。
- 実数精算工事項目
設計の時点では、外壁の高い所やバルコニーの全数を立ち入り調査が出来ないため、「コンクリートの補修」や「タイル補修」は想定数量で設計し、実際足場を組んで全数確認して上で精算します。
この項目を「実数精算工事項目」と呼びます。
- 追加工事
実際に工事が始まってから、設計に含まれていない項目の補修や改善が施工会社より多く提案されます。
内容は多岐にわたりますが、これらの項目を「追加工事」と呼びます。
工事監理者を配置しない工事では、実数精算工事の数量を増やしたり、チェックされているけど補修されていないなどの手抜き工事行われたり、不必要な追加工事が高額で提案されることがあります。
管理組合側の専門家がいない
工事監理者を配置しない場合、管理組合側でのアドバイスやチェック、クレームへの対応を行う専門家が不在になる可能性があります。
低品質な工事やトラブルなどが発生した場合、理事会の皆様は区分所有者に対する説明が求められるため、大きなリスクがあると考えられます。
まとめ
色々と書かせて頂きましたが、専門家として工事監理者を配置することは非常に重要であり、管理組合様側のリスクを大きく低減させることが出来ます。
一度ご相談ください。