こんにちは、MRCの平松です。
大規模修繕工事の実施前には、建物を目視確認したり、機械を用いて確認を行う建物調査診断を行うことが一般的です。
建物調査診断が、なぜ必要なのか知りたい方は本記事を参考にしてください。
大規模修繕工事・長期修繕計画策定等でお悩みの管理組合様はお気軽のお問い合わせください
この記事は以下のような方におすすめ
建物調査診断は、現在の建物の状態を把握するために行います。
この時の対象部位は管理規約に記載されている【共用部分】が対象になり、【専有部】は対象外となります。
主に、大規模修繕工事の前に実施する【建築部分】の調査診断と給排水設備等を対象に実施する【設備部分】の調査があります。
【建築部分】であれば前回の大規模修繕工事から10年程度経過後、設備であれば新築後25年程度経過したタイミングで実施することが一般的です。
管理会社・設計事務所・施工会社などが実施することが多いですが、実施目的としては長期修繕計画に計上している工事の実施時期を確定することにあります。
調査診断を行わずに、長期修繕計画に計上されているから工事が必要と判断することは適切とは言えません。
分譲マンションで建物調査診断が必要な理由
建物調査診断とは
建物調査診断の内容
今回は大規模修繕工事の前に実施する建築部分の建物調査診断の内容について解説します。
建物調査診断は以下の流れで進められます。
- 書類調査
- 管理組合ヒアリング
- 居住者アンケート
- 現地調査
- 調査診断報告書の提出及び居住者説明会の実施
それぞれ解説します。
書類調査
建物の現地確認を実施する前に、様々な書類調査が必要になります。
竣工図・修繕履歴・過去に実施したアンケート・前回の大規模修繕工事実施内容・長期修繕計画書などを書類調査する必要があります。
特に日常的に発生している漏水等の不具合を事前に把握して現地調査に臨むことは非常に重要です。
管理組合ヒアリング
日常的に建物を管理している管理組合や管理会社から、どのような問題が発生しているかを確認することは非常に重要です。
よくあることは防水層以外からの漏水が頻発している・・・などの問題があります。
居住者アンケート
通常の建物調査診断ではバルコニーへの立ち入り調査を10%程度しか行いません。
事前にアンケート調査を実施した上で、異常が発生しているバルコニーを調査対象とすることはサンプリング調査として非常に有効です。
またアンケートの内容を広くすることで、生活をする上での問題点を把握した上で現地調査を実施することができます
現地調査
事前調査の情報を踏まえて現地調査を行います。
現地調査は以下の項目を実施します。
- 共用部目視・打診・触診調査
共用部である屋上や共用廊下、外部階段、手の届く範囲の外壁等を対象に打診器具を用いて確認したり、目視や触ることで劣化状態の確認をします。
劣化事象を図面に記入し、建物全体でどの程度の劣化が発生しているかを記帳しながら実施します。
- 各種機械式試験
専用の器具を用いてタイル付着力試験・塗膜付着力試験・シーリング物性試験・コンクリート中性化深度試験・既存塗膜厚試験・塗膜採取等を実施します。
これらは現在の外装仕上げの付着力が適正であることや経年と比較し、建物状態がどの程度であるかを把握するために実施します。
- バルコニー立ち入り調査
アンケート調査の情報をもとに10%程度の立ち入り可能住戸を対象にバルコニー調査を実施します。
調査内容は共用部と変わりませんが、漏水などの可能性がある住戸についてはもれなく実施することが必要です。
また、居住者の方と直接会話する機会にもなりますので、日常生活で感じている不具合をヒアリングすることもあります。
調査診断報告書の提出及び居住者説明会の実施
各部位ごとの所見や劣化図、劣化写真、各種機械式試験の結果を建物調査診断報告書としてまとめ、提出されます。
ここで重要になるのは、工事が必要かどうかの判断が記載されているかを確認することが重要といえます。
この段階で工事が必要と判断された場合は、工事内容の検討を進めていくことが必要になります。
またマンションでは、調査結果の【居住者説明会】を実施するところもあります。
これは大規模修繕工事などのマンション管理に無関心な居住者に対して、情報開示を行うことで参加意識を共有する上で非常に有効です。
どこに建物調査診断を依頼するべきか?
建物調査診断の内容を紹介しましたが、どのような専門家に依頼すれば適切な調査が実施できるのでしょうか。
候補としては以下が考えられます。
- 管理会社
- 設計事務所
- 施工会社
- マンション管理士
それぞれの特徴について、紹介します。
管理会社
基本的に管理会社では、長期修繕計画書に計上されている時期に建物調査診断を提案し、実施します。
大規模修繕工事の過半数は管理会社主導で行われます。
その為、建物調査診断の結果は【工事が必要】と判断する可能性が非常に高いといえます。
また、管理会社は日常管理を行う上で、漏水が発生したり、外観が汚れてクレームが発生する事態を避けたいという心理が当然発生します。
その事からも早期に大規模修繕工事を実施することがベターであると判断することが多いといえます。
設計事務所
基本的に設計事務所第三者であることから、工事の必要性について適切に判断する可能性は高いはと考えられます。
但し当然商売であるため、大規模修繕工事の設計や工事監理に繋げたい思いもある為、調査診断業務のみを実施した実績がどれくらいあるかを確認することをお勧めします。
また、一部では施工会社を動かして調査を実施する設計事務所も存在するため、マンションを担当する拠点に実際に技術者がいるかどうかを事前確認することも重要です。
施工会社
施工会社は建物調査診断を無償で実施することが多いです。
無償で実施する場合は、得をするようにも感じますが、実際には劣化事象のみをピックアップした内容になる傾向が多く、ほぼ【工事が必要】との判断がされます。
これは当然で、建物調査診断には多くの調査スタッフを動員する必要があり、調査診断報告書の作成も同様です。
そこにかかる必要をまかなうには、大規模修繕工事を受注する以外にありません。
基本的に施工会社が実施する建物調査診断は、その後の大規模修繕工事を特命で受注するための営業手法であると考えられます。
その為、無償診断の結果をそのまま受け入れて、工事の計画に移行することは避けたほうがいいでしょう。
まとめ
修繕積立金の枯渇が社会問題となる中で、実際に工事が必要か判断する建物調査診断は実施すべきです。
また1回目の大規模修繕工事を実施する前のマンションでは、新築時の瑕疵が存在する可能性があります。
新築時の瑕疵とはタイルの浮きや地中梁の鉄筋を切断しているなど、様々な事象がありますが、専門知識を有する専門家が調査をすることで、早期に発見でき、事業主やゼネコンに交渉することが可能になるでしょう。
これらの交渉は事業主系の管理会社ではなかなか困難であることも理解すべきでしょう。
一度ご相談ください。
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