大規模修繕工事

大規模修繕工事の談合とは?その事例や原因・防ぐポイントなどを専門家が詳しく解説

大規模修繕工事は建物の資産価値を維持するために行う、数十年に一度の頻度で実施される一大イベントです。そして、大規模修繕工事には、多額の工事費用が必要となってきます。

大規模修繕工事には、マンションの組合員が毎月コツコツと積み立ててきた修繕積立金が使われます。組合員全員の貴重なお金が投入されるわけですから、当然のことながら、有意義にそして納得性をもって工事を進めていかなければなりません。

しかし、昨今、談合という不当な行為によって、その大切な修繕積立金が蝕まれる事態が起こっています。

 

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この記事は以下のような方におすすめ
大規模修繕工事の談合について詳しく知りたい
談合が起こる原因やその事例について知りたい
談合の被害に遭わず、安全に進めるポイントについて知りたい

本記事はマンションの大規模修繕工事の談合について、専門家の立場からわかりやすく解説しています。今後、マンションの大規模修繕工事の実施を検討されている方はぜひご覧ください。

大規模修繕工事の談合とは

大規模修繕工事のために積み立てている修繕積立金が、業者による談合によって不当にかすめとられるという問題が起こっています。それでは、談合とはいったいどのようなものなのでしょうか。

談合とは何か

談合とは、競争入札で参加者が事前に落札者との間で価格を決めておく、不当な行為のことを指します。発注者側は、競争させて値段を下げたいのにもかかわらず、裏ではすでに価格が決められているので、競争原理が働かないことになります。

大規模修繕工事で起きる談合

一般的にマンションの大規模修繕工事では、入札に参加した工事業者からの見積りをとって、その価格を比較検討し、業者を決定します。これが、コンサルタント業務を行う設計事務所(以下、設計コンサル)という立場であれば、見積価格を操作することが可能です。

設計コンサルは管理組合側にアドバイスをする立場なのですが、談合をしている工事業者が有利になるようにして、その見返りを得ることがあります。これが大規模修繕工事で行われている談合です。

設計コンサルは、管理組合から業務依頼を受けて対価を得ていますが、このような行為は利益相反行為であり、不正な行為です。昨今、このような談合が横行しており、社会問題となっています。

大切な修繕積立金が食い物に

分譲マンションの組合員は、管理費のほかに修繕積立金を毎月支払うのが一般的です。これが、談合によって修繕価格が高く釣り上げられれば、先々の資金が不足し、さらに高額な積立金の負担が必要となってきます。
つまり、談合によって住民は損害を負うことになるのです。コツコツ貯めた修繕積立金が不当に搾取されることは許されるものではありません。

談合の事例

管理組合は、そもそも大規模修繕工事を実施する場合、どのようにして進めていけば良いか分からないのが実情です。
善良な設計コンサルを選定できれば被害に遭わずに済むのですが、残念ながらここで間違った方向に行くケースがあります。次にその事例についてご紹介します。

(事例1)安い見積金額を提示して、巧妙に管理組合に入り込む

公募により応募してきた設計コンサルから見積りを取得し、良さそうな事務所を呼んできてヒアリングを行います。

その段階で、悪質な設計コンサルは、一番安い金額を提示し、さらに説明を上手に行うことで管理組合に入り込んでくる場合があります。

(事例2)不必要な改修工事までも提案し、高い金額の設計予算を確保する

悪質な設計コンサルは、工事業者と談合を行うグループを作って情報交換を行い、受注させる業者を事前に決めておきます。そこで、多くのキックバックを得るために、不必要な工事を提案して高額な設計予算を確保する場合があります。

(事例3)応募条件を制限し、参加する工事業者を限定して工作を行う

工事業者を選定するときは、設計コンサルを選定したときと同様に公募を行います。その際、受注させる業者はすでに決めているので、応募条件を制限するなどして工作をする場合があります。

(事例4)予定通り談合を行い、事前に決定している業者を受注させる

管理組合は悪質な設計コンサルの勧めにより、事前に決めている業者を含む複数の工事業者からヒアリングを行います。しかし、最初から筋書きが決まっているので、事前に決めている業者が受注するよう誘導します。

中には管理組合が推薦する工事業者が見積りに参加するような場合もあります。しかし、その場合は言葉巧みに排除にかかります。決定した業者からキックバックを得るため、あの手この手で工作を行います。

(事例5)事前に決めていた業者が受注して多額のキックバックを得る

規模が比較的大きい大規模修繕工事であれば億単位の金額にもなり、リベートも1千万を超えるようなこともあります。だから、最初のコンサルタントの料金は安くても問題がないということです。

このような工事業者には、厳しい工事監理が期待できるわけもなく、結果的に手抜き工事につながるようなケースもあります。また、管理会社が加担するなど、複雑な利害関係が絡んでいる場合もあります。

なぜ談合が起こるか

管理組合は、一般に専門的知識がないので、設計コンサルや管理会社にアドバイスを受けることが多く、場合によっては言いなりになってしまうこともあります。

また、組合員や理事の関係者の関与を避けて、クレームになりにくい公募方式や入札形式を採用し、設計コンサルや工事業者を選定することも原因にあげられます。その場合は、一番安い金額を提示した設計コンサルに発注し、談合に巻き込まれる傾向があります。

次に、このような状況を招いてしまう管理組合や大規模修繕工事の特質などについて説明します。

管理組合の特質

多くの管理組合の運営は、輪番制(順番)で選ばれた役員が、いやいやながら引き受け、責任体制が不明確なまま、無報酬でやらされているという現実があります。

このような状況の中で大規模修繕工事のような大きな事業を行う際は、なるべく面倒なことはせずに、責任を回避し、組合員からも文句を言われないようにして、早く終わらせて辞めたいというのが本音のところです。

大規模修繕工事の特質

マンションの外壁や屋上の大規模修繕工事は、十数年に一度のスパンで実施します。さらに、給排水更新工事に至っては一回限りの場合もあります。

このことから、大規模修繕工事で儲けようとする設計コンサルや工事業者にとっては、顧客である管理組合は一見客であり、誠実に長い期間お付き合いをしていく意識に希薄な傾向があります。

一方、大規模修繕工事を行うマンションは年々増加しています。悪質な業者にとって大儲けできる機会は今後も多いといえます。将来、大規模修繕工事を控えている場合は、十分な注意が必要です。

談合が起こる時代背景

昨今のタワーマンションブームを受けて大型工事が増加傾向にあり、コンサル業者間の競争がますます激化しています。このような状況下において極端に安いコンサルティング料を提示し、強引に仕事を取りに行く業者も出てきました。

設計コンサルはその分を取り戻そうと工事業者に多額のマージンを求め、それが工事費の高騰を招き、結果として管理組合に大きな負担が降りかかることになってしまいます。

談合を防ぐポイント

上記で談合の様々な事例やその背景ついて説明してきました。それでは、大規模修繕工事を実施する際における業者(設計コンサルや工事業者)の選定、その他、何か不安を感じた際にはどのようなことに気をつければ良いでしょうか。

次に談合の被害に遭わないようにする具体的なポイントについて見てみましょう。

業者選定におけるポイント

まずは、大規模修繕工事に関与する設計コンサルや工事業者といった業者選定におけるポイントについて見ていきます。

金額のみで設計コンサルを選ばないこと

専門知識がない管理組合にとっては、見積書一つとっても難解です。そのため合計金額だけを見て判断してしまいがちです。しかし、決して合計金額だけで判断してはいけません。

安い金額で受注しておいて、後で多額のキックバックを受け取っている設計コンサルが存在します。コンサルタントの料金は安くなっても、工事金額が高くなり、結果的に損をすることになってしまいます。

見積書を確認する際は合計金額のみではなく、その金額となった根拠など不明な点を質問して、単価や工数が妥当かどうか判断するようにしましょう。

会社の評価基準を設けて判断すること

業者を判断する際は、事前に評価基準(資本金、資格者数、実績など)を設けて判断すると良いでしょう。工事業者の場合は、工事完成や引渡後の保証などの問題があることから、会社規模や財務内容などの信用度(倒産リスク)は重要な指標となります。

設計コンサルの場合も同様にそれらについて検証し、今までのコンサル実績、経験なども加えて判断すると良いでしょう。しかし、あまり過剰な条件をつけて表面的な数値等だけで判断しないように注意しましょう。

設計コンサルはヒアリングを重視し、信頼度を判断すること

設計コンサルの業務は、実際に担当する者の「人となり」、または実力や経験などによる部分が非常に重要です。応募書類などの資料やプレゼンの内容だけで判断するのではなく、じっくりと時間をかけてヒアリングを行いましょう。

それにより、会社とともに実際の担当者は適任であるか、信頼できそうかを判断するようにしましょう。その際、事前に具体的な質問を用意しておき、できるだけ多くの人に参加してもらい意見を求めることも有効な方法です。

工事業者の選定には、設計コンサルなどの業者にさせないこと

談合は工事業者を選定する段階で起こります。安全に思える公募であっても、設計コンサルや管理会社が関与して条件を決めている場合は、その段階でメンバーが決まっている場合があります。

前述のように、公募または入札において、悪質な設計コンサルが工事業者の選定を巧みに操作する場合があります。まずは設計コンサルに工事業者を選定させないことが必要です。

その他のポイント

次に業者選定以外における全体的なポイントについて見ていきましょう。

極力多くの工事業者を見積に参加させること

業者の応募要件を厳しく設定すると、応募してくる業者の数が限られ談合がしやすくなります。

一方、見積に参加する業者数を多くすると、談合で受注したい業者が多くなって必然的に談合がスムーズに進みにくくなります。これによって、談合でよく見られる「横並び状態」や単価設定の不自然さなども発見しやすくなります。

予算の規模にもよりますが、極力多くの工事業者を見積に参加させるようにすると良いでしょう。

設計価格の妥当性を確認すること

設計価格が高いような場合は、談合がやりやすくなってしまうので注意が必要です。

一方、設計価格が妥当な金額であれば談合で設定する価格の幅が狭くなり、横並びであることが分かりやすくなることから談合がやりにくくなります。設計価格の妥当性をよく確認するようにしましょう。

設計監理方式だけが良い大規模修繕工事の進め方だと思わないこと

設計コンサルの選定は、各種セミナーや管理会社のアドバイスなどにより、設計監理方式を採用して公募で行うのが一般的です。しかし、前述のとおり設計コンサルが談合を先導していくこともあるので、設計監理方式だけが良い進め方だと思わないようにしましょう。

信頼できるセカンドオピニオンをパートナーとして起用すること

悪質な設計コンサルは、管理組合の心理を熟知しており非常に巧妙なので、未経験の方が談合であるかどうかを判断するのは容易ではありません。

このような場合は、信頼できるセカンドオピニオンを信頼できる第三のパートナーとして起用することも検討すると良いでしょう。より安全に大規模修繕工事を進める上で有効な対策となります。

時にはやり直す覚悟を持つこと

談合されたと思ったときは、たとえスケジュールに支障をきたすことになっても一旦、白紙に戻し、納得できるまで調査を行い、場合によっては最初からやり直す覚悟を持つことが必要です。

談合をされたら多額のお金を無駄に使ってしまうようなことになるかもしれません。着工が遅れると不便や不具合が発生するかもしれません。しかし、十数年に一度のことです。居住者に理解してもらい毅然とした態度で対応していくことも重要です。

まとめ

前述のように、大規模修繕工事は、組合員がコツコツとためてきた多額の修繕積立金を使って実施する一大イベントです。修繕積立金は組合員の大切な財産であり、血税そのものです。

修繕積立金は、マンションの資産価値の向上に向けて有効活用しなければなりません。それなのに、談合などという不当行為により修繕積立金が搾取されるような事態になることは、断固として阻止しなければなりません。

今後、大規模修繕工事の実施を検討される際、または近々に実施を控えておられる場合は、ぜひ本記事をご参考いただければ幸いです。

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